爽やかな逃走

僕らの旅を「青春」なんて名付けて過去にすんな。

2017.09.03

 

世界情勢は未だ不穏な空気を漂わせて、

日曜日、本日のトレンドは「核実験」。

 

平和ボケだとか、終末思想だとか、なんでもいいけど、

相変わらず政治家の揚げ足を取ってトピックを埋めるマスメディアを横目に、

僕はと言えば、東京を中心に広がる4色の円を眺めていた。

 

どうせ端っこに居たって、

どうせ遠くの地に居たって、

どうせなら一番真ん中で。

 

真っ黒い溜息がワンルームに飽和して、

耐えられなくなって外に出た。

 

散々嫌ったこの街も、

こんな日ばかりは空気がおいしくて、空が青くて、

明日が来ることを願った。

月曜日は嫌いだが、それでも願った。

そろそろ、笑い事じゃなくなってきた気がするから。

 

綺麗な星空で悩み事がどうでもよくなったなんてよく聞くが、

日常の終わりが上空をかすめて今を噛み締めるなんて、なんて皮肉だろうか。

 

美味しそうなケーキの写真がタイムラインに流れた。

きっと、知らない方が幸せなんだよ。

 

 

「上空を通り過ぎたミサイルは 未だ誰の心にも落下せず」

ミサイル/amazarashi

 

 

 

2017.08.02


想像ではもっと晴れやかな気持ちのはずだったんだが。
これは後悔か、罪悪感か、はたまた失望か。

 

未来は明るいかな。これからどうなるんだ。
そんなことを考えながら、小雨の中を、傘を蹴りながら歩いた。

 

イヤホンをつけて再生ボタンに指を近づけたところで、見知らぬおじさんに話しかけられる。道を聞かれたからスマホで調べてやったら「便利」だの「これからは若者が活躍する時代」だの「俺が若いころは」だの、あれこれと関係のない話を始めた。終いには「いいか!上司の言いなりになんてなるなよ!」と謎の激励。「日本の未来を頼むぞ!」と謎の責任転嫁。

 

「いやおじさん、俺、たった今辞めるって言ってきたところで」
「そんでな!俺が若いころはな!」

 

だめだ、聞いちゃいねえ。
まぁいいか。僕も少し気が紛れた。
聴こうと思っていた曲よりも少し明るめの曲を流す。

 

あいつ、本当は話相手が欲しかっただけなんだろうな。

 

 

 

少しだけ遠回りして仕事場へ戻ることにした。

 

僕は1年前、あの町を出て、この街で流されて、何度も後悔して、そして今日、ようやく自分で選んだ。今日は、初めて自分に勝った記念日なんだ。そう何度言い聞かせても、どうも気分が上がらない。

 

いっそ怒鳴ってくれれば良かったんだが、こんな時だけ妙に優しかった。引き留めたいが為かもしれない。それでもあの目は、大人が優しいときに見せる目だった。いや、もしかしたら最初からそうだったのかもしれない。目を合わせなかったのは、いつまでも拒絶していたのは、きっと僕のほうだ。本当はもっと上手くやれたんじゃないのか。これ以外にも、選択肢はあったんじゃないのか。

 

自分に勝ったとは言え、当然負けたほうも自分の中にいて、しばらくそちらに頭と体を占領される。たぶん、ラスボスはこいつなんだと思う。もはや世の中の定型文でしかない「本当の相手は自分」だなんて言葉。あれもあながち嘘ではなかったんだな。

 

もう前を向くしかなくなった。選んだのは自分だ。
本当はそんなに難しく考えなくていいんだ。
僕は、今一番大切なものと、「今」という時間を選んだ。それだけだ。

 

少しだけワクワクする。
強がりでもいい。馬鹿でもいい。笑われたっていい。
この選択を、正解と言える選択を。
それが誰かの不正解でも。

 

もう後戻りはできねーぞ。

 

2017.07.30

 

環境は人を変えたりしない。

人が環境で変わるんだ。

 

ストレスで倒れて入院した時、病院のベッドから窓に向かって、誰かのせいにすることを覚えた。

 

仕事でストレスが溜まるのはあいつのせい。

肺に穴が空いたのは奴らのせい。

これがこの街ではもはや日常茶飯事なのは社会のせい。

綺麗な景色はたくさんあるのに一向に世の中が良くならないのはこの国のせい。

僕が幸せになれないのは、世界のせいだ。

 

傷を泥で覆い隠した。

唯一、自分を守る手段だった。

すっかり汚れた心に気づいたのは、ついさっき。

新幹線の車窓から、川の向こうに高層ビルが見えた時。

 

洗い流せるだろうか。いいや、無理か。

じゃあいっそ磨いてやるくらいはできるか。

もう誰も触れたくなくなるような、僕だけのデザインをしようか。

自分だけの色で、汚そう。

 

だったら、僕の居場所はここではないよな。

綺麗な景色を知っているんだ。そこに行こう。

逃げてやるよ。

お前は逃げなかったんだろう。僕は逃げるよ。

 

喜怒哀楽の、怒と哀から逃げ続けた男の末路をそこでじっと見ているがいいさ。ざまあみろ。

 

気分がいい時に、決意表明。

これで気分がいいなんてさ、笑えるだろ。

汚れてんだよ。

 

 

 

 

 

2017.07.13

踏み切りで鳴る警告音が、電車に切られて嫌にうるさい。
こちらとあちら。
たかが棒一本で区切られて、僕は前から2番目で待っている。
通り過ぎて数秒、風に吹かれて視界が狭まる。
伸びっぱなしの前髪は、もはや自信喪失の象徴でしかない。

 

疲弊した心は後ろを向くとはよく言うが、
きっと本当は行き場を失うんだ。ただ彷徨うだけ。

 

冷めた弁当を食べながら、眺めるディスプレイに昔の女。
「結婚するか」と片手で送る。
「いいよ」と数秒で帰ってくる。
僕はあいつのこういうところが嫌いだった。

 

シャワーを浴びたら戦場へ。
アドレナリンが濡れた髪を乾かす。
缶チューハイが脳内を侵食したらショットガン。
後は暴れるだけ。全てを忘れる、今だけ。
スナイパーに撃ち抜かれて、我に返ったら消灯。

 

硬いベッドに寝転んで、
イヤホン越しの寝ぼけた声。
この瞬間。
いつも「もう少しだけ」と願う。
僕は僕のこういうところが嫌いなんだ。

 

2017.07.12

 

工数、人月単価、人売り、人売り、

要らなくなったら切り捨てて。

 

フォーマット通りの設計書、人生設計書。

妥協と惰性で蔓延る、日の当たらないオフィス。

裏口のベンチを見下ろす、灰色の空とか。

 

「仕方ない」と呟けば、とりあえず今日に意味を見出して。

心臓に溜まった腐った血液も、コンビニ弁当に溶け込んで。

終末思想を、こじらせて。

 

 

きっと、あいつはもう時期、切られる。

ババを引いたのは、彼の方だったんだ。

だから、落ち込むことはないよ。

 

仕方ない、なんてことは、絶対にないよ。

 

 

 

 

 

2017.06.17

 

たとえば、

 

今、この場所から逃げ出して、この小さな箱と少しばかりの紙切れを燃やして、なんなら失踪なんかしたりして、最悪自死を選んだりして。

 

きっと、そういう、大切な人たちに迷惑と心配をかけるような行為を選択することができない部分が、僕の弱さだ。

 

たとえば、

 

昨日まで笑っていた家族の写真が、夕方のニュースに出回って、心を痛めて見せてもナイフ1つ手に出来ないような部分が、僕の弱さだ。

 

たとえば、

 

空いた電車で、真っ先に端っこの席を選ぶ部分が、僕の弱さだ。

 

それでも、

 

こうして、諦めずに毒を吐き続ける行為を続けられることは、きっと僕の強さだ。

 

抗え。抗え。

物質主義に抗え。

 

 

 

2017.06.11

 

休日に家に居ても、ゴミと毒が溜まる一方だから、とりあえず外に出ることにしたんだ。好きな服を着て、髪も少しばかり整えて。容姿に気を使ってるうちはまだマシなんだろうな、なんて思う。誰に会うわけでもないけれど。

 

池袋か。渋谷か。とにかく人混みにでも行って、二階のカフェのカウンターなんかで、今日くらいは人間たちを下に見てやろうと思った。

 

武蔵小杉。東横線、池袋方面。いや、なんか違うな。隣のホームの電車にしよう。各駅停車。ちょうどいい。渋谷まで何駅か。ん?多摩川駅とかあるんだ。いいな。ここにしよう。

 

行き当たりばったりの日曜日。

駅を出てすぐの場所に、小さい神社があって、どうせならと参拝。財布には500円玉と1円玉。「ご縁(5円)がうんたら」とか信じない僕は1円玉。二礼二拍一礼。「幸せになるよ」と神様に決意表明。いつからかお願いはしなくなった。僕は僕の力でってね。神様も荷が重いだろ。

 

多摩川の河川敷を歩く。日曜日は誰しもが笑顔で、曇った空にも青が透ける。冷めたからあげクンを頬張りながらamazarashiをBGMにゆっくり歩く。風に流離い。

 

遠くにグラウンドが見えたから、とりあえずそこまで歩く。なんとなくいつも見てしまう。あぁ、あの頃は僕も白球も追いかけた、なんて思い出に耽る癖も、もうそろそろ終わりにしたい。

 

グラウンドの横、土手の1番上に腰を下ろす。子供達はじゃれて、大人達は飲みに行く約束。なんだ、試合終わってたのか。ホームランの一本でも見れたなら、明日にでも辞表を提出する勇気くらいは出たかな。

 

涼しくなってきた。ここに座って30分ほど経つだろうか。こんな日曜日も悪くないだろ。

 

高架橋の上、電車の唸り声で立ち上がる。

また来るよ。次で最後だ。